ゲームを通して、グローバルレジリエントリーダーシップを疑似体験

「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」(以下、GRLPと表記)」は年2回、9月と12月に開校する短期の研修プログラムです。9月はIMDと早稲田大学、日産財団、12月はペンシルバニア大学ウォートン・スクールと早稲田大学、日産財団が、各回5日間にわたって共同で独自のプログラムを提供します。

今回は、IMDクラスの中盤に行われた体験型セッションを少しだけご紹介します。体験型セッションでは、今年からGRLPに登壇したIMDのJennifer Jordan教授をファシリテーターに、性別も年齢も経歴も異なる参加者が複数のチームに分かれて、2つのゲームを通して“グローバルレジリエントリーダーシップ”とは何かを疑似体験します。

チームが一致団結して、制限時間内に目的を達成

1つ目のゲームは、チームメンバーが協力して、あるものを制限時間内に組み立てるというものです。もちろん、いきなり組み立てられるわけがありません。ですから、実際に組み立てる前に検討時間があります。その時間を使って、チーム内でどのように組み立てていくかを話し合うのです。

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Jordan教授の合図とともに、全員一斉に動き始めました。ホワイトボードを使うチーム、ポストイットで目印をつけていくチーム、役割分担をしていくチームと、各チームは千差万別な動きを見せます。

このゲームは、時間的な制約があるなかで、いかにチーム内の意見を集約し実行するか、計画通りに進まなかったときにどのようにリカバリーするかがポイントとなります。実際のビジネスでも、同じような状況になることはよくあります。そのようなときにどのように対処するか、困難をどう乗り越えるのかを体験するというわけです。

ジェスチャーや表情だけでコミュニケーション

2つ目のゲームは頭脳を使って勝負する個人プレイのカードゲームです。このゲームでは、プレイ中の会話が禁じられ、ジェスチャーや表情だけで他の人とコミュニケーションを取ります。会話がNGだけでもコミュニケーションが難しいうえに、さらに意思疎通を難しくする仕掛けもあり、プレイヤーの困惑を反映してか、プレイ中、会場は緊張感と奇妙な静寂に包まれていました。

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このゲームのポイントは、コミュニケーションに制限があるなか、どのようにして相手に自分の考えを伝えるか、相手が何を考えているかを推察する点にあります。このゲーム、一見すると特殊なルールなので、現実とはあまり関係がないように思えます。しかし、このようなコミュニケーション不全の状態というのは、現実の組織でもよく見られる現象です。そのようなときに、いかにアサーティブになれるかを体験したというわけです。

体験型セッションは、ゲームに“失敗”させることが目的

GRLPのIMDコースには、今回レポートしたような体験型セッションが必ず組み込まれます。IMDでは、こうした体験型セッションを20年以上にわたって提供しており、同校のプログラムの特徴ともなっています。

GRLPの5日間のプログラムは、大別すると、戦略・イノベーションとリーダーシップの2つに分けることができますが、この体験型セッションはリーダーシップにおいて特に重要です。それは、グローバルレジリエンスリーダーは考え方や行動を機敏に変えていかなくてはならないからです。この体験型セッションは、それを体感してもらうために考えられたゲームなのです。

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今回は、この体験型セッションをリードしたJordan教授に振り返っていただきました。

――多くのチームが失敗しますが、エグゼクティブにとって、失敗を経験するということは極めて重要です。これには、2つの意味があります。1つは、仮に失敗していないとしたら、それは十分にトライしていないことを意味するからです。というのも、エグゼクティブにとってはトライするということがとても重要なことだからです。もう1つは、レジリエンスは“起き上がる力”とも言えますが、その前提には“失敗する”ことがあるからです。失敗があって、そこからどうやって立ち直るのか、跳ね返すのかが求められるのです。

1つ目のゲームでは、全チームとも1度目よりも2度目のほうがよくなりました。これは、1度目を通じて学びがあったからです。特に、今回は素晴らしいチームがありました。そのチームは40分間にわたって失敗し続けましたが、そこから戦略を変えて最終的には非常に大きな成功を収めました。

今回は全チームともうまくいきましたが、2度目が必ずよくなるとは限りません。場合によっては、1度目でうまくいかなくて、完全にモチベーションが下がり、お互いに非難しあったり、けんかをしたりで、2度目がまったく機能しないということも起こります。

2つ目のゲームでは、新しく入ってきた人、つまり新規参入者とのコミュニケーションをどう取るかという異文化コミュニケーションを体験します。自分がどのような状況であるかをジェスチャーや表情で表現できた人もできなかった人もいましたが、多くの人がアサーティブを体で学んだことでしょう。

セッションの最後に、一番大事なリーダーシップにとっての学びとは何かを参加者に質問したときに、まさにこのセッションを導入した狙いと一致する答えがたくさん出てきたことに満足しています。その狙いとは、「前提条件をどう捉えるか」や「新しい人が入ってきたときに、その人を無視してはいけない」などです。

これらは、たとえば「組織が変わる」「会社を変える」「アメリカからスイスに行く」など、誰にでも起こりえることばかりです。そして、たいていの場合、そうしたときにはルールや文化が変わります。つまり、ある意味、人は誰でも新規参入者になりえるということです。その意味でも、多くの方に、この体験型セッションを通じてグローバルリーダーシップについて学んでほしいと思います。

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Jennifer Jordan
IMD教授
アメリカのエール大学で博士号と2つの修士号(心理学と哲学)を、ケロッグスクールオブマネジメント&タックスクールで博士号を取得後、ロザリンドフランクリンフェロー、オランダのグローニンゲン大学准教授を経て現職。専門はリーダーシップと組織行動学。

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