カルロス・ゴーンの日産改革 倒産寸前の大企業を救った、たった1つのシンプルな考え方

7年に亘る赤字と、その結果としての巨額損失を計上し、まさに壊滅寸前だった1990年代の日産自動車。藁にもすがる思いで海外企業との提携を模索するなか、日産復活のため白羽の矢がたったのが、ルノーで200億フランという壮大なコスト削減計画を実行し、「コストカッター」の異名を持つ、カルロス・ゴーン氏です。

冷徹な経営者と思われがちなゴーン氏は、一体どんな人物なのでしょうか。今回は、日産をV字回復させるまでのストーリーとともに、カルロス・ゴーン氏の経営哲学を紐解いていきます。

カルロス・ゴーン氏はなぜ、日産を復活させることができたのか

日本を代表する企業の一つでもある日産自動車。この大企業が壊滅の危機に陥った時、これまで誰もできなかった改革を行ったのが、カルロス・ゴーン氏です。

ゴーン氏は、応急処置的な手段ではなく、抜本的な改革のため「従業員の意識改革」と「マネジメントの建て直し」を行い、日産の再生を果たしました。

ゴーン氏の経営手法はとてもシンプル。それは、「そこにある問題を順番に解決すること」です。

倒産寸前、危機的状況だった日産

1990年代の日産自動車は、優れた技術力、ブランド力を持ちながらも、金融危機の波に飲まれ、さらにバブル崩壊後の「失われた10年」によって高級車の販売不振が続きました。継続的なシェア低下傾向を反転できず、巨額の損失を計上するまでの経営危機に陥っていたのです。

仏ルノーと提携し、ゴーン氏がCOOに就任した際、社員の危機的意識は低く、マネジメント層の責任範囲は曖昧で、様々な問題が雑多に存在して、蓋をされている、そんな状況だったそうです。

社員とのコミュニケーションを重ねた結果、日産が抱えている問題の解決策は社内にある、そう確信したカルロス・ゴーン氏は、様々な職務、地域、職位の社員を集めた部門横断型のプロジェクトチーム「クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)」を設立し、自身の手で、本格的な再建に取り組みます。

そして、CFTが中心となり、策定されたのが、「日産リバイバルプラン」です。

日産ルネッサンスの幕開け 日産リバイバルプランとは

1999年10月に発表された「日産リバイバルプラン」では、以下の9つが掲げられました。

  1. 2001年3月31日までに黒字化
  2. 2003年3月31日までに営業利益率4.5%以上を達成
  3. 2003年3月31日までに有利子負債1兆4000億円を7000億円に削減
  4. 21,000人の人員削減(総労働力の約14%)
  5. 計5ヶ所の工場閉鎖
  6. 購買コスト20%削減。サプライヤー数を1145社から600社以下に削減
  7. ノンコア・ビジネス系列会社の株式および資産の売却
  8. テクノロジーへの再投資。2000〜2002年度にかけて新製品22種を売り出す。
  9. 年間投資額の1000億円増加

これらのプランには全てに具体的な期限と数値目標、明確な責任体系が設けられました。そして何より、人々を驚かせたのが、目標年度に必達目標である1〜3が達成できなければ、ゴーン氏を筆頭に、エグゼクティブ・コミッティ全員が辞任すると発表されたことです。予断を許さない状況に自らを追い込み、計画を遂行していったのです。まさに、背水の陣。

日産リバイバルプランは、全社から横断的に集まったプロジェクトチームを中心に、あらゆる分野で徹底的に実行に移され、全ての目標が設定された期限、あるいは前倒しで達成されました。

日産180

日産リバイバルプランの成功によって、見事危機的状況を脱した日産自動車。次のステージとして、さらなる成長を目指した「日産180」計画が打ち出されます。

1990年代に目指していた方向を180度転換を目指すことで始まったこの計画。、180の「1」は販売台数100万台増、「8」は営業利益率8%、「0」は負債ゼロを意味しています。

成長、収益性、負債削減の3つの柱を軸に、日産を新たな進路へと推し進めました。

カルロス・ゴーン氏の本当の凄さ

日産自動車復活の背景には、これまで慣習的に行われていた古い経営体質からの脱却と、社員ひとりひとりの意識改革が行われたということがあります。

カルロス・ゴーン氏は、複雑化、深刻化している問題においても、何が原因なのかを即座に特定します。そして、解決の糸口を探し出し、短期的な目標と中長期的なビジョンを元に、最適な仕組みを構築して、最後には明快かつ客観的に評価します。
厳しさの中にある優しさやユーモア、個人を尊重しながら、自ら引っ張っていくリーダーシップが人を強く惹きつけ、ついていきたいと思わせる所以でしょう。

そして何より、カルロス・ゴーンが本当に凄いのは、自身の言動に責任を持ち、机上の空論ではなく、とにかくやり遂げるという「行動力」と「言行一致」の精神にあると思います。

2017年4月に日産CEOを退任されたカルロス・ゴーン氏ですが、ゴーンイズムが継承された今後の日産自動車にも注目していきたいと思います。

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