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まるで活発なディベートのよう。ウォートン・スクールのマイケル・ユシーム教授の講義

変化の激しい経営環境下で、変革を主導する次世代のリーダーを育成するためのプログラム「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」(以下、GRLP)。2017年9月はIMD・早稲田大・日産連携プログラム、同12月はウォートン・早稲田大・日産連携プログラムで実施しました。

今回は、ウォートン・スクールと、ウォートン・スクールの名物教授であるマイケル・ユシーム教授の講義がどのように進められるのかをご紹介します。

金融系に強いウォートン・スクール

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールは、1881年にペンシルバニアの実業家ジョセフ・ウォートンの寄付によってペンシルバニア州フィラデルフィアに設立された、アメリカ初のビジネススクールです。

ペンシルバニア大学は、アメリカ北東部のある私立大学8校からなるカレッジスポーツ連盟アイビー・リーグに所属する名門大学、そのビジネススクールであるウォートン・スクールもM7(※1)と称されるアメリカの私立MBA経営大学院7校の一角をなしています。

(※1)M7には、ハーバード・ビジネス・スクール、スタンフォード大学経営大学院、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス、MITスローン経営大学院、ケロッグ経営大学院、コロンビア・ビジネス・スクール、そしてウォートン・スクールが属しています。

19の専攻と200の選択科目を提供

ウォートン・スクールは“ファイナンスのウォートン”と称されるほど金融に強いと言われています。ですが、カリキュラムは金融系に偏ることなく、マーケティングやマネジメント、ヘルスケアマネジメントなど幅広く提供されており、その数は、専攻が19、選択科目は約200種類に及びます。

こうした豊富なカリキュラムを求めて、全世界から学生が集まってきます。MBAクラスでは、実に32%が留学生(2017年9月時点)。彼らは73カ国からウォートン・スクールに集結します(※2)。同校の卒業生であるNMKV代表取締役社長・遠藤淳一氏によると、「規模が大きい学校でありながらフレンドリーなところもある、すばらしい学校」だそうです。

(※2)https://statistics.mbacareers.wharton.upenn.edu/full-time/

キャンパス外でのリーダーシップトレーニングも多彩です。その中の一つであるエクスペリエンシャルラーニングでは、みんなでボートを漕いだり、ニューヨークの消防本部で消火活動の体験をしたり、軍隊に1日体験入隊をしたりするそうです。このトレーニングでは、事前に誰が何をするか役割分担を決めることで、座学ではなく実際にそこにいる人とコミュニケーションをとりながら問題を解決することを学びます。遠藤氏によると、とてもよいトレーニングだったそうです。

こうしたトレーニングは、年々重要性が増していますし、進化もしています。近年では、3~4週間かけて海外の対象国を調査するプロジェクトや、実際の企業をコンサルティングするプロジェクトなども提供されています。

卒業後は、大勢の人がグローバル企業で活躍

卒業後は、多くの人がアクセンチュア、ゴールドマン・サックス&カンパニー、グーグル・インクなど名だたるグローバル企業に入社しています。企業名を見ると、やはり金融系が多いように感じます。そうなると報酬も気になるところ。ウォートン・スクールのホームページによると、卒業生の年棒の中央値は130,000USドル(2017年9月時点)。さすがですね。

卒業生の中には、任期2年目になる第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ、起業家としても著名なスペースX社CEOのイーロン・マスク、アップルコンピュータ元CEOのジョン・スカリーなどがいます。日本人では、富士ゼロックス元会長の小林陽太郎氏、世界銀行グループMIGA長官CEOの本田桂子氏、作家で経営コンサルタントの神田昌典氏など。なんとも豪華な顔触れです。

グローバル規模のアルムナイ組織

卒業後も、学生同士、学生とウォートン・スクールのネットワークは継続します。縁があってウォートン・スクールで一緒に学んだのですから、このネットワークを活用しなければもったいないというものです。

卒業生たちのアルムナイには、北米、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東・アフリカの地域ごとに組織されたウォートンクラブと、業界や興味ごとに組織されたアフィニティクラブの2種類があり、ボランティアによって運営されています。

ウォートンクラブでは年2回ほど、エグゼクティブエデュケーションのようなものの企画や寄付の集め方など、どのような貢献をできるかを議論します。そういったイベントが全世界で年間1,000以上も開催されています。日本にも日本ウォートンクラブがあり、そこの代表は遠藤氏が務めています。遠藤氏は、ウォートン・スクールについて「卒業生同士だけでなく、学校側がアジアに来たり、ヨーロッパに行ったりと、卒業後もコンタクトを持っています」と語ってくれました。

リーダーシップで著名なマイケル・ユシーム教授

ウォートン・スクールには、マクロ経済を専門とするジェレミー・シーゲル教授、リーダーシップやコーポレート・ガバナンス、意思決定を専門とするマイケル・ユシーム教授など200人以上の教授が在籍しています。その中の一人であるユシーム教授は、第1回目のGRLPから「変革のリーダーシップ」を担当しています。教鞭を執るだけでなく、民間企業や政府組織、非営利団体などさまざまな組織でリーダーシップ開発に携わり、コーポレート・ガバナンスに関するコンサルティングも行っています。

そのユシーム教授の講義とはどのようなものなのでしょうか? 少しだけご紹介します。

テンポよく進むユシーム教授のリーダーシップ講義

2017年12月。GRLP2日目。朝9時からの2コマがユシーム教授の「変革のリーダーシップ」。受講生たちにはまだ少し緊張した様子が見られました。

今回のGRLPには、グローバル企業の課長、部長、執行役員などを務める36人の男女が参加しました。所属部署は、経営企画部や人事部、営業部、海外事業部、購買部など多岐に渡ります。海外駐在の経験のある方、海外駐在はないもののTOEICで高得点を出している方も大勢いました。

ディスカッションでは、この36人がテーブルごとの3人、あるいは2テーブル合わせた6人のグループに分かれます。なお、席はGRLPの主催者が、参加者の経験や年齢などを踏まえて、いろいろな人とコミュニケーションができるように配置しているそうです。

ユシーム教授の講義スタイルは、教育界で話題沸騰中の「アクティブラーニング」といわれるもの。これは、グループディスカッションやディベート、グループワークなどを通して、学生が能動的に学ぶという学習方法のことです。皆さんも、一度や二度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

NHKが放送していた「ハーバード白熱教室」をイメージしていただければわかりやすいかもしれません。ハーバード大学のサンデル教授が学生に質問を投げかけ、学生が答える、その答えを受けてさらに展開していく。教授から質問するだけでなく、学生が質問し議論が発展することもあります。いずれにしても、先生が一方的に説明して、学生はノートを取るという講義スタイルとは違い、学生に考える力をつけさせることを目的としています。

GRLPでも、ユシーム教授は、ある状況を設定して「自分ならどうする?」と、常に受講生に問いかけます。そして、受講生が発言をすると、必ず一人ひとりに「これこれこういう点に気づきました」というポジティブなコメントをします。

もちろん、グループディスカッションもあります。さまざまなバックボーンを持つ受講生です。彼らは、自身の経験をもとにグループ内で意見を言い、他の人の話を聞いて、グループとしての意見をまとめ、代表者が発表する。それを受けて、ユシーム教授が「AやBという意見がありましたが、これについてはどう思いますか?」と、他のグループに意見を求めます。

時には、受講生自身に次の回答者を指名させたりもします。はじめはぎこちなく、口が重かった受講生たちも、講義が進むにつれて、ディスカッションに熱が入り、ざわざわと騒がしくなっていきます。それでいながら、ユシーム教授が解説するときや、各自が考えるときにはシーンと静かになる。教室全体がリズムをもってテンポよく進む様は、まるで一つの演奏を聴いているようでした。

「コーヒーブレイクには、ぜひ私を探し出してください。握手をして、オフレコでお話したいです」。この言葉を受けて、1コマ目と2コマ目の間のコーヒーブレイクや講義修了後には、ユシーム教授の周りには、サジェスチョンを受けようとする大勢の受講生が集まっていました。
誰もがリーダーになりえること、今はリーダーでなくてもリーダーの心構えで何事にも取り組むこと、チームでリーダーシップを執ることの重要性を全員に考えさせ、繰り返し語りかけたユシーム教授。その3時間は、その場にいた全員に多くの気づきを与えてくれました。


マイケル・ユシーム Michael Useem

ペンシルバニア大学ウォートン・スクール経営学教授

現在、Wharton Center for Leadership and Change Managementセンター長、William and Jacalyn Egan経営学教授、Wharton Leadership Digest編集者を兼務する。

ミシガン大学卒業、ハーバード大学大学院にて博士号を取得。ウォートン・スクールのMBAとエグゼクティブMBAの両コースで、リーダーシップ、コーポレート・ガバナンス、意思決定を教える。また、民間企業、政府組織、非営利団体など多くの組織でリーダーシップ開発に携わり、コーポレート・ガバナンスに関するコンサルティングを行う。

フィナンシャル・タイムズ、ハーバード・ビジネス・レビュー、ウォール・ストリート・ジャーナル、フォーチュンなどに数多くの論文が掲載されているほか、10冊以上リーダーシップの書籍を出版している。邦訳には、『九つの決断』(光文社刊)、『できる人ほど上司を使う』(ダイヤモンド社刊)、『取締役会の仕事』(日経BP社)などがある。

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